『サブウェイ123 激突/ THE TAKING OF PELHAM 1 2 3』(2009)

    • 名作『サブウェイ・パニック』(1974)のリメイク作を観た。ニューヨークの地下鉄が四人組の男にハイジャックされ、乗客を人質にして高額な身代金を要求する。その対応や交渉に当たるのが鉄道公安局に勤める主人公で、犯人グループのリーダーと丁々発止のやり取りをしてゆく。その基本ラインは本作もオリジナル作も変わらぬが、1974年版はウォルター・マッソーロバート・ショウ、2009年版はデンゼル・ワシントンジョン・トラボルタという配役で、それだけでもだいぶ印象が変わる。飄々とした演技のマッソーと鉄面皮のショウの対比はそれだけでワクワクできる。ワシントンは演技派であるけれども、トラボルタは過剰な演技が持ち味ゆえ、後者はどっちも熱くなりすぎるのではないかと、ぼくは懸念した。
    • 古典作品のリメイクを除けば、オリジナル作を凌駕した例はあまり聞かない。『遊星からの物体X』は成功した例だろう。そんなわけで、本作も期待せずに観た。監督はトニー・スコット。『エイリアン』『ブレードランナー』を作ったリドリーの弟さんだけれども、主演俳優陣の配役も考慮すれば、アクション主体の作品になることが予想された。
    • 結果から書くとそれほど悪い作品ではなかった。オリジナルを名作たらしめているともいえる巧妙な伏線と、最後にニヤリとさせるその仕掛け以上のものをこしらえるのは不可能なので、それは割り引かれる。想像通りトラボルタの狂気が強調されすぎて、ジェットコースター・ムービーの類型を出ないが、人物の掘り下げや葛藤もきちんと描かれていたのは評価できる(ただ、『インサイド・マン』とちょっとかぶる人物造形であり、デンゼルおなじみの正義漢というスタンスは相変わらずだ。そこら辺はマッソーのが面白い)。また、現代的な仕掛けとしてネット文化が加味されてたり、ワシントンがちょっと体重を増やしているなど役作りに熱心な人だなと関心する。まぁ、観ても損はない作品であるが、まずはオリジナルを観てもらいたい。オリジナルはデヴィッド・シャイアの音楽がまた素晴らしいし(リメイク版は音楽は以下略であるけど)、さらに吹き替えテレビ音声も楽しめる。

デジャヴ [DVD]

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