地上波放送と日本語吹き替え版の魔力の関係

    • 昔は映画を観るという行為は映画館まで足を運ぶのは面倒くさいってのもあって、よほど観たい物でない限り、地上波放送されてからでいいか〜的なノリがあった。まぁ、最近は映画館上映→DVD販売というサイクルが短くなってきてるし、早く観たいって人を除けばDVDならば何度も観られるのでそっちのがお得感がある。映画再生機がビデオそしてLD、今やDVDとほぼ完全に標準機が移行し、PCも一般に普及していることから、簡単に、大容量を記憶できる再生メディアがDVDディスクでもあるのでDVD化をすれば、それなりの売り上げを期待できるわけである。
    • しかし、DVDがない(あるいはビデオなり他の記録媒体がこれほど普及していない)時代はテレビによる地上波放送ってのは非常に重要な位置にあった。各局民放はロードショー枠を持ち、それぞれ解説する看板パーソナリティがいた。名称変更や解説者の有無などはあるが、時期が長く有名なものを代表的に書くと、

1972年10月〜1983年6月1日 水野晴郎
(この間 一部で福留功男
1983年8月10日〜1984年9月 愛川欽也
1984年10月〜1985年3月 堀貞一郎
1985年4月3日〜1997年3月28日 水野晴郎

  • 東京放送系(TBS)
    • 月曜ロードショー(1969年10月〜1987年9月 故・荻昌弘
    • ザ・ロードショー(1987年10月〜1988年9月)
    • 火曜ロードショー(1988年10月〜1989年3月)

1988年10月下旬〜1989年1月下旬 小堺一機

    • 火曜ビッグシアター(1989年4月〜9月)
    • 水曜ロードショー(1989年10月〜1993年9月 宮島秀司)
  • フジテレビ系
    • 金曜ゴールデン洋画劇場(1971年4月2日〜1981年3月)
    • 土曜ゴールデン洋画劇場(1981年4月〜2001年9月)

1971年4月〜1973年9月 前田武彦
1973年10月〜1998年9月 高島忠夫

    • ゴールデンシアター(2001年10月〜2003年9月)
    • プレミアムステージ(2003年10月4日〜現在)

1966年10月1日〜1998年11月15日 故・淀川長治

1969年10月16日〜1973年4月26日 故・芥川也寸志
1973年5月3日〜1977年3月24日 故・南俊子        
1977年5月12日〜1978年1月12日 ハンス・E・プリングスハイム
1978年2月2日〜1979年3月29日 倉益琢真(東京12チャンネル・映画部部長)
1979年4月5日〜1981年3月26日 故・深沢哲也
1981年4月2日〜1982年2月25日 山城新伍
1982年3月4日〜1987年10月1日 河野基比古
1987年10月8日〜2003年3月27日 木村奈保子

    • となる……みたいである(・∀・)……生まれる前はさておき、ぼくの幼少時代からの記憶でこれらのゴールデン時間帯のロードショー枠を眺めてみると、水曜ロードショー時代の水野晴郎、月曜ロードショーの故・荻昌弘、土曜ゴールデン洋画劇場の高島忠夫日曜洋画劇場の故・淀川長治木曜洋画劇場は以下略みたいに、それぞれイメージがあった。放送の最初の解説で期待に胸膨らませて観るわけである。高島氏はタレントであり、専門の評論家ではないので映画の選定には口出ししていないかもしれぬが、御大・淀川さんを初め、荻昌弘さんや水野さんや深沢さんや芥川さんなど映画畑に関係ある方々は「次はどんなのがいいですかねぇ?」とか局側に尋ねられたら、面白い映画を推薦するだろうからある一定以上の名作が観られる確率が高まるわけである。そういう意味で、時代性もあり、お茶の間の娯楽として地上波映画が機能していたともいえる。けれども、時代は移り変わり、だんだんと、テレビにおいて映画がキラーカードとしてゴールデンを飾る意味が薄れてゆくことに。解説者をつける番組はなくなり、固定枠も少なくなった。なんか寂しい感じがする……
    • さてさて、そんな中で、地上波映画放送の重要性は吹き替えにあるとぼくは考えている。現在、映画館→(DVD化)→地上波放送という一連の流れであるが、ゴールデン帯の地上波放送では吹き替え放送がほぼなされる。海外俳優の声=この吹き替え声優という図式を確立させていったのも、歴代の地上波放送だ。

などなど……書けばきりがなくなるので。

    • さらに、昨今は過去の名作映画やテレビシリーズのDVD化が色々なされている。CDの低価格競争からDVDの低価格競争へ移行し、海外配給会社はその規模を生かし、廉価な映画ソフトを大量に供給している。だが、過去の地上波放送の良質な遺産を用いた日本語吹き替え版を収録したDVDというのはまだまだ不完全といえる。007シリーズなどは全部がDVD化されてるようだが、案の定近作のピアース・ブロスナン版以外、このような日本語吹き替え収録がなされていないのである。各テレビ局に協力を求め、広川さんのMr.BOOもそうであったが、ビデオ版は存在するのにそれを用いず、他の吹き替えキャスティング版で出してしまうというのはファンががっかりしてしまうのである。するなら、より完全なDVD化を希望したいわけである。