『バイティング・ザ・サン / BITING THE SUN』(1999) タニス・リー著/環 早苗訳 産業編集センター刊

バイティング・ザ・サン

    • <平たい地球>シリーズや<パラディスの秘録>シリーズで知られるイギリスの女流ファンタジー作家、タニス・リーのSF作品。
  1. 『太陽に噛みつくな / DON'T BITE THE SUN』(1976)
  2. サファイア色のワイン / DRINKING SAPPHIRE WINE』(1977)
    • これら<フォー・ビー>シリーズと称される二編の長編(というかノヴェラ?)を合本したのが本書である。
    • デビューが1970年頃でその最初期は、『ドラゴン探索号の冒険 / THE DRAGON HOARD』(1971)というジュブナイル・ファンタジーを書いているが(同書は社会思想社の現代教養文庫刊で、出版社が倒産したので入手は古本屋でどうぞ)、本格的な活動は"The Birthgrave"に始まる<白い魔女>シリーズ(未訳)が書かれた1975年であるらしい。で、その時期に書かれたSFということだ。

遠未来、アンドロイドたちが奉仕する理想都市フォー。根元的な死すらない永続的な生を約束され、苦痛も病もなく、姿や人格などを好きに代え、快楽に浸って暮らす人間たち。そんな管理社会に疑問を抱いた少女の物語……

    • まだ出始めを眺めただけであるが、設定的にはよくあるような管理社会の典型であるようだ。そんなユートピア社会の真の姿が明らかにされ、デストピア的様相が見えてゆく、アンチ・ユートピア小説と言えるのではないだろうか。設定的にはありがちに思えるが、美しい文体で知られるリーの初期SFということで、ぼちぼちと読んでいきたい。翻訳は結構凝っていそうなので楽しみだ。