『ラスト・マップ 真実を探して / AROUND THE BEND』特別編(2004)

ラスト・マップ/真実を探して 特別版 [DVD]

    • 考古学者のヘンリー・レア(マイケル・ケイン)は銀行員の孫ジェイソン(ジョシュ・ルカス)とその息子ザック(ジョナ・ボボ)と暮らしていた。ある日、ジェイソンを置き去りに家を去ってしまった息子ターナークリストファー・ウォーケン)が、30年振りにひょっこり姿を見せる。ヘンリーは喜び、彼お決まりの"高級"レストランで再会を祝う。しかしながら、負い目を背負う息子ターナーと突然のことで戸惑う孫ジェイソンの間に穿たれた心の溝は深く、彼の理想とする「幸福な家族の姿」には遠かった。人生は必ずやり直せると信念を持つヘンリーは家族の絆を取り戻そうと、とある妙案を思いつく。アメリカ南西部を1枚の地図を頼りにしたレア家4世代の過去探しの旅が始まる……
    • いよいよ、ふたりの競演作を観た。過去を捨てたはずの男ターナー。過去を掘り起こし、探求し続けた老古学者ヘンリー。実利を好み、今を生きる銀行家ジェイソン。未来の可能性を秘めた幼きザック。ロード・ムービーであるが、この対比はよく考えられた家族構成だ。失われた過去を探ることにより、ポッカリと空いていた親子の関係が南西部独特の赤茶けた荒野と、蒼穹から黄昏色に移り変わる空をバックに次第に紡がれてゆき、しみじみとした涙を誘う佳作だ。ラスト付近で流れるレオン・ラッセルの泥臭いが哀しいラブソングの名曲「ソング・フォー・ユー / A SONG FOR YOU」など、選曲もいい。
    • マイケル・ケインクリストファー・ウォーケンというもう黄昏の世代にある名優たちの演技は素晴らしく、ジョシュ・ルーカスの演技も堅実だ。若い子役ジョナ・ボボは初映画出演でも物怖じしていない。家族の絆という普遍的なテーマに目新しさはないかもしれぬが、初監督となるジョーダン・ロバーツの脚本はよくできている。原案は10年前に舞台用として作られたもので、それを映画用に書き直すこと数十回、約5年ほど前から映画化を進めていたらしい。本作は水準以上のできで、なぜにこれが劇場未公開であったのか疑問に思う。派手さはないが、巷に蔓延り、CG映像と巨大制作費だけのエセ大作より全然マシであろう。
    • 2004年モントリオール世界映画祭にて審査委員特別賞、ウォーケンが最優秀男優賞、及びサンディエゴ映画祭にて最優秀作品賞を受賞している。
    • 原題のAROUND THE BENDであるが、BENDは曲がり道や曲がり角であり、直訳すれば「曲がり角の辺りで」や「曲がり道を回って」とかになるが……実はこれは口語で成句がある。「気が狂って」である。人生の道を踏み外した男ターナーを皮肉ってそうとも取れる隠喩なのかもしれないが。