久世光彦逝く

    • TBSの元演出家でプロデューサーであった久世光彦氏が去る3月2日に急死してしまった。死因は虚血性心不全らしい。(-人-)合掌
    • で、久世さんといえば、TBSドラマの特に、庶民的コメディの制作に一翼を担った人という印象が強い。『時間ですよ』(1970〜1973)、『寺内貫太郎一家』(1974〜1975)、『ムー』(1977)、『ムー一族』(1978〜1979)という画期的な、テレビ視線をドラマに導入して庶民を描いたどこか哀愁のある喜劇ドラマは子ども時代、非常に不思議な異空間に見えた。ひとりが叫ぶと、ふたりが叫び、結局はみんなが叫ぶドタバタになり、大喧嘩になる。リアリティがあるようでいて、それは結局は臨場感生む虚構の観劇性を導入したように感じている。「事実は小説より奇なり」とはよくいうが、「よく考えられた物語は事実より奇なり」なのである。また、『悪魔のようなあいつ』(1975)では演出と制作だが、サスペンスに満ちた類を見なかった犯罪事件である「三億円事件の犯人」を描いてみせたが、ここでは長谷川和彦による脚本がサスペンンス色を盛り上げてくれる。長谷川さんも虚構の面白みとそれと対になるリアリティを大切にする監督であり、脚本家だ。色々な意味で、一時代を築いた名匠の死は少しばかり切ない。