『八つ墓村』(1977)

八つ墓村

    • さて、本作は市川監督によるリメイク作ではなく、故・野村芳太郎監督によるいわゆるよく知られた作品。故・松本清張の社会派ミステリを映画化した『砂の器』(1974)の主要スタッフによる映画化であった。脚本に橋本忍、音楽に故・芥川也寸志などを使い、どこか角川や東宝映画とは違う社会派よりの作りである。特に違いは、金田一役が寅さんいや、故・渥美清であることが目を引く。時代は原作での設定より現代へと少し変更されている。
    • 寺田辰弥(萩原健一)は尋ね人欄に自分の名を見つけ、神戸の諏訪弁護士(大滝秀治)の元を訪れる。そこには亡き母・井川鶴子(中野良子)の祖父・井川丑松(故・加藤嘉)が待っていた。辰弥を実孫と確信し、岡山の山村にある旧家・多治見家の跡取りとして是非村へ来て貰いたいというのだが、丑松は目の前で謎の死を遂げる。葬儀のために多治見家の分家・西屋の森美也子(小川真由美)と共に辰弥は村へ向かう。辰弥はその村に伝わる伝説を美也に聞かされる。この村は400年前、尼子氏の家臣であった落武者たち八名が落ち延びるが、尼子義孝(夏木勲)らは村人に謀殺され、その恨みを鎮めるために八つ墓明神が奉られ、少し前まで八つ墓村と呼ばれていたのだった。祖父の葬儀後、 多治見小竹(市原悦子)、多治見小梅(山口仁奈子)ら双子の祖母らと見守る中、病床にあるという腹違いの兄・多治見久弥(山崎努。二役) がまたもや怪死し、岡山県警の磯川警部(故・花沢徳衛)が事件調査に乗り出していた金田一耕助(故・渥美清)の要請を受け乗り込んでくる。さらに二十数年前、狂った父・多治見要蔵(山崎努。二役)によって三十二名もの村人が無差別に殺されたと知り、出生の血脈から逃れる如く、姉・多治見春代(山本陽子)の制止を振り切るように辰弥は村を出ようとするが……
    • 落ち武者どもの怨念、過去の無差別殺人、そして現在に起こる連続殺人……伝奇的な趣向に重ね、実在の津山事件(津山三十人殺し)をモデルとした社会派性が加味され、横溝正史独特の血の宿怨というものがうまく描かれている。さらに舞台を鍾乳洞に移したりと、ロマンもあるメロドラマ的仕立てもある。芥川也寸志の音楽は甘やかで、赤みを帯びた映像はどこか仄暗い。この寅さんをしばしば彷彿とさせる金田一はどこかゆったりとしている。ショーケンこと萩原健一は味わいがあり、『傷だらけの天使』『前略おふくろ様』などのテレビドラマですでに存在感を発揮している演技力はなかなかである。そうはいっても、山崎努の怪演には勝てないわけだが。妙齢の小川真由美山本陽子らも見所であるが、怪しいといえば、小竹と小梅が一番ぁゃιぃんだけどね(・∀・)