『ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方 / THE LIFE AND DEATH OF PETER SELLERS』(2004)
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- 主演のセラーズを演ずるのはジェフリー・ラッシュ。『シャイン / SHINE』(1995)において、第69回アカデミー最優秀主演男優賞を受賞したオーストラリア出身の俳優で、 『恋におちたシェイクスピア / SHAKESPEARE IN LOVE』(1998)では助演男優賞候補、『クイルズ / QUILLS』(2000)ではマルキ・ド・サド公爵を演じ主演男優賞候補になったりと、舞台出の実力派である。この他にも1998年公開作は特に、『エリザベス / ELIZABETH』『レ・ミゼラブル / LES MISERABLES』に出演するなど、歴史物に縁があったようだ。近作では『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち / PIRATES OF THE CARIBBEAN:THE CURSE OF THE BLACK PEARL』(2003)や2006年公開予定の続編や、スピルバーグ監督作品『ミュンヘン / MUNICH』(2005)にも出演している。監督はスティーブン・ホプキンスで、TVシリーズ『24』のシーズン1や『ロスト・イン・スペース / LOST IN SPACE』(1998)を撮った人である。
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- いささか脱線したが、このジェフリー・ラッシュ演ずるセラーズがとてつもなく似ている。もう本人が撮っている自伝映画といってもいいほどにそっくりである。ラッシュ曰く、「セラーズがもし生きていたらこんな自伝映画を撮っていただろう」。ってなわけで、セラーズになりきっているのだ。セラーズの演じた役柄<ピンク・パンサー>のクルーゾ警部、『博士の異常な愛情』(1964)でのストレンジラブ博士を初め、米大統領にマンドレーク大佐を演じるひとり三役など、みんな奇特な人間たちだ。それはそれ、セラーズ自身が変な人であったからなのだが、この映画を観ると、何故にこんな人物たちになりきるのかというのが分かってくる。いわゆる仮面=ペルソナを被るわけである。人生そのものも、ある種の「自分」という仮面を被って「自分」を演じているようなのだ。
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- 激昂しやすく、子供っぽく、わがまま。共演したソフィア・ローレンに恋慕恋をし、妻と別れてしまうし、再婚した女優ブリット・エクランドとの生活もそうだ。息子や家族に注がれる過剰なまでの愛情は「自分」の器から溢れ出し、愛憎が綯い交ぜになって、一番落ち着けるのが奇特な人物を演じ、人生を映画のように続けることであったのかもしれない。喜劇と悲劇に満ちた人生だ。<ピンク・パンサー>の監督・制作者であるブレイク・エドワーズや、スタンリー・キューブリック監督との関係も同様であり、実体の不在をいつも感じていたように思える。
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- そんなセラーズは晩年、『チャンス』(1979)で達観したような演技を魅せる。主人公チャンスを演じるセラーズはどこか吹っ切れたようで、空っぽな「自分」の中にようやく何かを見つけたような彼がいる。人生五十半ば、本当の「自分」を見つけかけたセラーズがいた。映画好きな方には楽しめる佳作であるとお勧めできる。