『暗闇でドッキリ / A SHOT IN THE DARK』(1964)
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- <ピンクパンサー>の名前は冠されてないが、クルーゾー警部が活躍するという意味では、シリーズの範疇に含まれるもの。この映画の原作は元々、ウォルター・マッソー主演の舞台劇であったらしく、その映画化で監督のブレイク・エドワーズはピーター・セラーズに主演を頼んだらしい。しかし、クルーゾー警部は出てこないのでセラーズは渋る。撮影期間の都合や、基本的なセットはできていたので、急遽脚本や設定を書き直したということだ。そのときに脚本を一緒に書いたのが、のちにオカルト映画の金字塔となる『エクソシスト / THE EXORCIST』を書くことになる作家である故ウィリアム・ピーター・ブラッティであった。ブラッティは『地上最大の脱出作戦 / WHAT DID YOU DO IN THE WAR, DADDY?』(1966)や『銃口 / GUNN』(1967)などでも、ブレイク監督と脚本の仕事をやることになるが。
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- 1作目のように、宝石ピンク・パンサーは登場しないが、クルーゾー以外に以後の作品でもレギュラーとなる登場人物たちがここから現れる。クルーゾー警部の上司ドレフュス主任警部や、彼の召使いで空手の指南を受けてるというケイトだ。前者はクルーゾーのハチャメチャ迷警部ぶりに狂乱し、頭を悩ます人物であり、後者のケイトはTVシリーズ「グリーン・ホーネット / THE GREEN HORNET」(1966,1967)で、ブルース・リーが演じた助手カトーへと通じる、ヘンテコな東洋人風キャラクタだ。付け加え、本作から警部のフランス訛りの喋り方がピーター・セラーズのアイデアで採用され、百面相といわれる様々な変装が繰り出され始める。
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- 物語はスリラー風に、大富豪バロン氏の邸宅で、銃弾による暗闇の中の犯行で幕を開ける。容疑者として逮捕されたメイドの美女マリア・ガンブレリに、クルーゾー警部は一目惚れし、彼女が犯人であるわけはないとその無実を主張。捜査をするクルーゾーやマリアの行く先々で殺人事件が巻き起こるドタバタ劇である。
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- 音楽はもちろんヘンリー・マンシーニでお馴染みのテーマ曲は使われていないが、オープニングのアニメ映像や音楽はお洒落で、そこには『ルパン三世』的なモダンなエッセンスが感じられ、偉大なる作曲家であることは確かだ。
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- 日本語吹き替えを見てみると、『チキチキマシン猛レース』のブラック魔王や旧『ルパン三世』の十三代目石川五右ヱ門、チャールズ・ブロンソンの声優として知られる大塚周夫がクルーゾ警部である。ヒロイン役は小原乃梨子。バロン氏はクレジットは載っていないが、明らかに人気テレビシリーズ、『奥さまは魔女 / BEWITCHED』(1964〜1972) の冒頭のナレーションのアフレコで有名な中村正さん。他は分からぬので空欄にしてあるが以下。
クルーゾー警部………ピーター・セラーズ(大塚周夫)
マリア・ガンブレリ……エルケ・ソマー(小原乃梨子)
ドレフュス主任警部……ハーバート・ロム(西田昭市)
ベンジャミン・バロン…ジョージ・サンダース(中村正)
バロン夫人……………トレイシー・リード(?)
エルキュール…………グレアム・スターク(?)
ケイトー…………………バート・クウォーク(?)