『ピンク・パンサー2 / THE RETURN OF THE PINK PANTHER』(1975)

takaren2006-05-13

    • さて、いよいよ今回のリミテッド・コレクションの目玉の登場である。長らく、日本ではDVD化されずに放置されたままであった<ピンクパンサー>の正編パート2。いわゆる物語は、『ピンクの豹』の数年後という設定であり、またもや怪盗ファントムさんが登場する。が、だが最初のリットン卿役のデビッド・ニーブンはだいぶ高齢であり、本作では若いクリストファー・プラマーが演じている。怪盗ファントムは変装の名人であり、前作の彼は敢えて、老けた変装をしていたという設定のようだ。そして、その妻カトリーヌ・シェル演じるリットン夫人であるが、エンドロールの役名を見るとクローディーヌとなっていて、これは前作では明かされてない設定である。
    • 物語は世界最大級のダイヤ「ピンクパンサー」の盗難事件から始まる。中近東のルガシュ国の国立博物館に、厳重警備体制で展示されていた「ピンクの豹」が何者かの手によって盗まれる。現場に残されたPと刻印のある白手袋は怪盗ファントムが明かしだった。数年身を潜めていた怪盗が動き出したのだ。ルガシュ警察はそのエキスパートであるフランスのパリ警視庁のクルーゾー警部に出動を請う。怪盗ファントムことチャールズ・リットン卿はその盗難記事を新聞で知り、物思うことがあるのだった……
    • 怪盗ファントムと迷警部クルーゾーがドタバタを繰り広げる設定はルパン三世的なお決まりのパターンであるが、そのスプラスティック度更に増している。物語的には数年ということだが、『暗闇でドッキリ』(1964)からの空白のおよそ10年、ブレイク・エドワーズ監督や主演のピーター・セラーズは「何をしていたのか?」という疑問が多々ある。
    • 風刺コメディの快作『パーティ / THE PARTY』(1968)でふたりはコンビを組んでいるし、セラーズは007のコメディ版『007/カジノ・ロワイヤル / CASINO ROYALE』(1967) も撮っているし、ウディ・アレン脚本・出演でも知られるピーター・オトゥール主演コメディ『何かいいことないか子猫チャン / WHAT'S NEW, PUSSYCAT?』(1965)やら、 美女ブリット・エクランドも出た英伊合作の犯罪コメディ『紳士泥棒/大ゴールデン作戦 / AFTER THE FOX』(1966)など十指に余る様々なコメディ作品に主演・出演している。だが、この時期セラーズは深刻な問題を抱えていた。心臓病であり、ペースメーカーを埋め込んでいたのだ。思い込みが激しいセラーズは、占い師に頼っていて、幸運を掴むにはB・Eというのが鍵だといって(ブレイク・エドワーズもそうなんだが)、『007/黄金銃を持つ男 / THE MAN WITH THE GOLDEN GUN』(1974)のボンドガールとなるブリット・エクランドと再婚したりと大変なドタバタ人生であった(これは以前紹介した自伝映画に詳しい)。話は変わるが、<ピンクパンサー>のスピンオフ的に、アラン・ラーキン主演の『クルーゾー警部 / INSPECTOR CLOUSEAU』(1968) も別監督で撮られたりしている。
    • で、本作はこれだけ版権所有がMGMではない。MGMも1973年には配給部門を整理し、ユナイテッド・アーティスツ社(UA)が配給権を管理し、1981年に併合されMGM/UAとなり、1986年にCNN創業者テッド・ターナーのメディア王が買収とか、その後も色々な買収転売劇の紆余曲折があった。ちょっと前まで20世紀FOXがMGMの権利を持っていたが、最近MGMはソニーが買収し、旧コロンビア・ピクチャーズ(現ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント)も抱えていて、ソニータイム・ワーナーと張る映画コンテンツ産業になっている。だが、『ピンク・パンサー2』の権利はユニバーサル・ピクチャーズにあるというややこしいことで、20世紀FOX時代のボックスセットにはそこら辺の折衷がうまく逝かなかったのか、日本版DVDはコレクション化されなかったのである。それが入っただけでも進展であるわけだが、以前のセットを買った人はそこはかとなく哀しい。2も限定で単品発売されるという措置もあってもいいと思うが、そうなると、今回のDVDボックスは売れ行きが渋くなるであろうが、再三特別版やコレクターエディション、廉価版と繰り返されるDVD競争販売戦略を見ても、手にはいるのはいいわけだが、お財布に優しく、過去の遺産という吹き替えやら特典を充実させるなど、もうちょっと消費者のことを考えた日本版DVD化戦略を考えて欲しいものである。
    • 今回の2の吹き替え情報はノンクレジットであるが、聴いた感じで推測するならたぶん以下。旧テレビ放送版ではないみたいだね(´・ω・`)

クルーゾー警部………ピーター・セラーズ羽佐間道夫
チャールズ・リットン卿……………クリストファー・プラマー小川真司
リットン夫人(クローディーヌ)……カトリーヌ・シェル(小原乃梨子
ドレフュス主任警部……………ハーバート・ロム(内海賢二)
シャーキ大佐…………………………ピーター・アーン(?)
ケイトー……バート・クウォーク(?)