『ホミニッド―原人― / HOMINIDS』(2002) ロバート・J・ソウヤー著/内田昌之訳 ハヤカワ文庫SF刊

    • たまには最近読んだ本を紹介。まずはあらすじをカバー裏から。

クロマニヨンが絶滅し、かわりにネアンデルタールが進化した世界で、量子コンピュータの実験をしていた物理学者ポンターは、不慮の事故でいずこかへと転送させられてしまった。一方、カナダの地下の研究所で実験を行っていたルイーズは、自分の目を疑った。密閉した重水タンクのなかに異形の人物がいきなり出現したのだ! 並行宇宙に転送されたネアンデルタール物理学者の驚くべき冒険とは……?

    • 読み進めて思ったのはやっぱりソウヤーだなぁって感じである。量子物理学ネタに、ミステリ的あるいは人類学的要素が絡まり渾然一体となっている娯楽作品となっている。読んでいるとソウヤーって(・∀・)イイ人なんだろうなと思ってしまう。SF大会とかそういうものは参加したりしないので実物は見たことないが、優しそうなオジサンである。その風体からも分かるが小説には暖かい眼差しが注がれてる。ちょっと暗い(社会問題的な)ネタもあるがそこはそこ、ソウヤーらしくまとめている。
    • さて、あまり踏み込んだ感想を述べてしまうとネタが割れるのでしないけれど、エヴェレットの多世界解釈なども出てくる。物理学関係でぼくが好きなのはやっぱり宇宙論関連のトピックだが、小難しくは書かかれていない。読みやすい本だ。また、ネアンデルタール人を主人公にしてしまおうって発想も面白い(今までないことはないらしいが)。本作はシリーズものである<ネアンデルタール・パララックス>の第1作でヒューゴー賞を受賞している。第2作『ヒューマン―人類― / HUMANSS』(2003)も気づいてみると、翻訳がもう出ているらしいので、近々買いたいと思う。宇宙論好きも、原人好きな人も読んで損はない一作といえよう。