『チャイナタウン / CHINATOWN』(1974)
-
- 1937年のロサンゼルスが舞台。ジェイク・ギテス(ジャック・ニコルソン)はチャイナタウンにある地方検事局出身の私立探偵であったが、素行調査などで食いぶちを稼ぎながら、うらぶれた生活を送っていた。水道電力局の部長モーレイの夫人を名乗る女から、夫の浮気調査を依頼される。調査を進めるギテスであったが、そんな彼の前に現れたのはもうひとりのモーレイ夫人イヴリン(フェイ・ダナウェイ)であった。やがて、ダム建設の利権を巡る人脈図が明らかになり始めるのだが……
-
- さて本作は、上記のロバート・エヴァンズが制作にし、悪友ニコルソンを主役に据え、名匠ロマン・ポランスキーが監督したフィルムノワールの傑作サスペンスだ。。『コンドル / THREE DAYS OF THE CONDOR』(1975)のフェイ・ダナウェイ、映画監督としても著名なジョン・ヒューストンといった演技派俳優陣の競演も見物で、ジェリー・ゴールドスミスによる音楽も美しい。作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、作曲賞撮影賞他各部門でノミネートされ受賞は逃したものの、傑出はやはりロバート・タウンによる考え抜かれた脚本であり、これは第47回アカデミー脚本賞を受賞している。ゴールデン・グローブは主要部門は獲得している。『さらば冬のかもめ / THE LAST DETAIL』(1973) や『カッコーの巣の上で』(1975)といったアメリカンニューシネマの佳作が制作されたのと同時期で、それらの主演であるニコルソンが俳優として一番脂が乗っている時期の作品であろう。
-
- 監督のロマン・ポランスキーは、1969年のいわゆる「シャロン・テート事件」で、妻で女優のシャロンを亡くしていた。が、その頃脚本に恵まれていなかったこともあり、この映画に惹かれ渡米を決意。ニコルソンを想定して書かれた脚本(言葉遣いや仕種)は探偵の一人称視点から観た如く、ハードボイルド小説の構造を定石にして映像化されていて、ポランスキーの美学がうまく表現されているが、脚本の結末は当初未定であって、その撮影数日前に決まったのだという。ちなみに、自身もこの映画に出演もしている。ポランスキーといえば、1977年の少女強姦事件で有罪判決となったが、映画撮影の為といってアメリカを出国し、現在も逃亡犯という身でヨーロッパを中心に活動している。『テス / TESS』(1979)や『戦場のピアニスト / THE PIANIST』(2002)などで、アカデミー賞の作品賞や監督賞の候補や受賞に関わるほどの監督だけに、犯罪は許されることではないけれど、もうちょっとそこら辺の所がクリアにならないかと思う。