『ステップフォード・ワイフ / THE STEPFORD WIVES』(1975)

ステップフォード・ワイフ [DVD]

    • ジョアンナ・エバハート(キャサリン・ロス)は弁護士の夫ウォルター(ピーター・マスターソン)と子どもたちと共に、コネチカット州の郊外にあるステップフォードへと越すことになった。都会ニューヨークから一変した田舎町暮らしは退屈だった。近隣の妻たちはただ家事をこなす従順な女であることに幸せを感じているようであり、どこか不自然さを禁じ得なかった。夫たち男たちは奇妙なコミュニティを結成し、ことあるごとに会合を開いていて、夫ウォルターもその会員になる始末。ジョアンナは、やはり越してきたばかりの先進的な女性ボビー・マルコヴェ(ポーラ・プレンティス)と意気投合し、お互いに感じていた不満を解決するが如く、この不自然さの裏にある謎の解明しようと乗り出すのだが……
    • ローズマリーの赤ちゃん』とは対照的に舞台は都会から田舎へ。だが、ここでも「何か底知れぬもの」によって日常が非日常へと知らぬ間に変化し、醸し出てゆく不協和音が描かれている。アイラ・レヴィンの物語構築の巧さはこの点に多くの比重を占めている。この60年代後半から70年代、ウーマン・リブ運動が盛んであり、フェミニズムに関連した風刺が原作執筆の動機かもしれない。ある種、女性蔑視的表現があるのでその批判ゆえに興行的には成功しなかったようで、日本でも未公開だ。傑作『マラソンマン / MARATHON MAN』(1976)の原作脚本者でもあり、サスペンス色のある作品が得意なウィリアム・ゴールドマンが脚本を担当している。『卒業 / THE GRADUATE』(1967)、『明日に向って撃て!』1969) の主演が印象的なキャサリン・ロスの違った面が窺え、日常が瓦解してゆく、不気味な恐怖が感じられるとは思う。