『ベータ2のバラッド / "THE BALLAD OF BETA-2"SAMUEL R. DELANY AND OTHERS』(2006) サミュエル・R・ディレイニー他著 若島正編 国書刊行会刊

ベータ2のバラッド (未来の文学)

    • 久々のハードカバー購入である。国書刊行会の<未来の文学>と題され、刊行されている海外SF叢書の第Ⅱ期であるが、今までも興味をそそる刊行物がなかったわけではない。第Ⅰ期ならば、ジーン・ウルフの『ケルベロス第五の首』やら、シオドア・スタージョンの『ヴィーナス・プラスX』なんかは食指が動く。第Ⅱ期もジーン・ウルフの『デス博士の島その他の物語』にはちょっと心が動いた。だが、高い、大きい、重いの三重苦である。電車じゃ読めないし、なるべくならハードカバーは買いたくない。ので、スルーしていた。しかし……である。
    • サミュエル・R・ディレイニーの「ベータ2のバラッド」収録したアンソロジーである。今は昔の、彼のニューウェーヴの時期の作品である。中編とはいえ、既訳翻訳本のほとんど絶版であり、原書で読むのもなかなか辛い作家のひとりである。そういえば発売していたなぁ……と、思い出し、電車に乗るのも面倒なので、ちょっと走り、自転車で本屋を探す。ない……ない……その隣駅へ……ない……神保町にも店舗を構える有名某書店がである。おかしい……あった……他の書店にである。そこは小さいながら、SF系やら趣味の本があることは昔から知っていて、やっぱりあったようだ。
    • さて、収録作は他に、ハーラン・エリスンバリントン・J・ベイリーの短編である。なぜにH.G.ウェルズの古典作品が入っているのか邪推せねばなるまいが(編者解説で、カウパーの作品に対するボーナストラックとしているかれども、ページ合わせにも思える)、サミュエル・R・ディレイニー作品が日本語で読めることは喜ばしい。本当は、廃刊となっている『エンパイア・スター』や絶版状態の『バベル-17』辺りと合わせるか、その多くの作品集として某文庫叢書から出てくれれば一番ありがたいのだが。