『銀河鉄道999』(1979)劇場版
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- ストーリーの説明は不要だろう。未来の地球、スラム街に住む少年・星野鉄郎(野沢雅子)が夢みた機械の身体を手に入れるため、出会った謎の美女メーテル(池田昌子)と共に、機械化惑星行き超特急列車「銀河鉄道999」へと旅をする物語だ。人間狩りにより母親を機械伯爵に殺された鉄郎の復讐譚でもあり、母親似のメーテルへのマザーコンプレックスと、思慕。異世界を訪れ、別れと出会いを繰り返し、少年が少しずつ大人へと成長してゆく話でもある。テレビ版『銀河鉄道999』(1978〜1981)とは作風が違ったりするが(星野鉄郎が美少年化している)、非常に色々な要素が詰め込まれたものをコンパクトにまとめた、監督りんたろうの手腕は素晴らしい。名脇役の車掌(肝付兼太)を初め、キャプテン・ハーロック(井上真樹夫)、エメラルダス(田島令子)、宇宙戦士・大山トチロー(故・富山敬) ら松本零士の他作品のキャラクタが絡んで、スピンオフする様も楽しい。
- テレビ版でもこの劇場版でも音楽は青木望が担当している。りんたろうが同じく監督した『幻魔大戦』(1983)でも同様である。特に、これらの映画をぼくが好む理由に、魅力的な主題曲が効果的に使われている点にある。『幻魔大戦』のキース・エマーソン然り、『銀河鉄道999』のテレビ版ではささきいさおのそれらも佳曲ながら、劇場版ではゴダイゴが担当する主題曲が素晴らしい。同名タイトル曲はあまりにも有名すぎるが、当時そのB面シングルとして発表された「テイキング・オフ!/TAKING OFF!」は名曲で、これを忘れてはならない。ゴダイゴファンの間では「銀河鉄道999 / THE GALAXY EXPRESS 999」よりも好きという人も多いと聞く。映像に、音楽に浸れるアニメ、こういうものが当時はまだあったのだなぁと、万感の想いを込めてノスタルジーに浸っている。故・城達也のしみじみと落ち着いたナレーションには涙が出てくるのだ。さらば少年の日々……