『銀河鉄道999』(1979)劇場版

銀河鉄道999 (劇場版)

    • 急に観たくなって買ってしまった。70年代後半、当時アニメ業界は絶頂期だった。数年前『宇宙戦艦ヤマト』がテレビ放映され、その続編および劇場版が平行して制作されていた(アニメファンの間では、いつ終わるのかという完結編でない完結編という感じに揶揄されてもいたが)。いままでの勧善懲悪の、ヒーロー巨大ロボットものと一線を画した、『機動戦士ガンダム』が放映されたのもこの年だった。
    • ストーリーの説明は不要だろう。未来の地球、スラム街に住む少年・星野鉄郎野沢雅子)が夢みた機械の身体を手に入れるため、出会った謎の美女メーテル池田昌子)と共に、機械化惑星行き超特急列車「銀河鉄道999」へと旅をする物語だ。人間狩りにより母親を機械伯爵に殺された鉄郎の復讐譚でもあり、母親似のメーテルへのマザーコンプレックスと、思慕。異世界を訪れ、別れと出会いを繰り返し、少年が少しずつ大人へと成長してゆく話でもある。テレビ版『銀河鉄道999』(1978〜1981)とは作風が違ったりするが(星野鉄郎が美少年化している)、非常に色々な要素が詰め込まれたものをコンパクトにまとめた、監督りんたろうの手腕は素晴らしい。名脇役の車掌(肝付兼太)を初め、キャプテン・ハーロック井上真樹夫)、エメラルダス(田島令子)、宇宙戦士・大山トチロー(故・富山敬) ら松本零士の他作品のキャラクタが絡んで、スピンオフする様も楽しい。
    • テレビ版でもこの劇場版でも音楽は青木望が担当している。りんたろうが同じく監督した『幻魔大戦』(1983)でも同様である。特に、これらの映画をぼくが好む理由に、魅力的な主題曲が効果的に使われている点にある。『幻魔大戦』のキース・エマーソン然り、『銀河鉄道999』のテレビ版ではささきいさおのそれらも佳曲ながら、劇場版ではゴダイゴが担当する主題曲が素晴らしい。同名タイトル曲はあまりにも有名すぎるが、当時そのB面シングルとして発表された「テイキング・オフ!/TAKING OFF!」は名曲で、これを忘れてはならない。ゴダイゴファンの間では「銀河鉄道999 / THE GALAXY EXPRESS 999」よりも好きという人も多いと聞く。映像に、音楽に浸れるアニメ、こういうものが当時はまだあったのだなぁと、万感の想いを込めてノスタルジーに浸っている。故・城達也のしみじみと落ち着いたナレーションには涙が出てくるのだ。さらば少年の日々……