『バタフライ・エフェクト / THE BUTTERFLY EFFECT』(2004)

takaren2007-10-19


バタフライ・エフェクト プレミアム・エディションリプレイ (新潮文庫)

    • 知り合いに薦められた映画だ。バタフライ・エフェクトとはバタフライ効果と言われるカオス理論用語である。気象学者エドワード・ローレンツが考察した気象モデルにおいて、ある非線型方程式(連立常微分方程式)は初期条件の違いによってその解が(決定論的非周期な)大きな違う振る舞いを見せる。その軌跡を三次元上で表現したものが有名なローレンツ・アトラクタである。その軌跡は蝶の羽の如くで、ローレンツが1972年の講演で採用した「ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こすか」というタイトルからバタフライ効果と呼ばれるようになった。実際は、それは詩的な比喩であるのだが、そのときの選択の少しの違いによって運命が大きく変わってゆくということから、映画のタイトルに使われているのであろう。
    • エヴァン(アシュトン・カッチャー)は少年時代しばしば、記憶の一時的喪失いわゆるブラックアウト現象を起こしていた。精神科医に日々の日記をつけることを治療の一環として薦められる。幼なじみの少女ケイリー(エイミー・スマート)、その兄トミー(ウィリアム・リー・スコット)、 レニー(エルデン・ヘンソン)らと共に過ごす生活は十三歳のとき、みなで起こしたある事件をきっかけに終わりを告げる。「必ず戻ってくる」とケイリーに告げ、街を去ることになるエヴァン。それ以来、記憶のブラックアウトも収まり、大学生に成長していたエヴァンは、何とはなしに昔の日記を読む。突然少年時の記憶が鮮明に蘇る不可解な体験をする。ふと気になったエヴァンは、ケイリーと久々の再会を果たすが……
    • 過去改変ものの一種のバリエーションである。このエヴァンの世界ではエヴェレットの多世界解釈の如く世界は再構築されてゆく。まぁ、過去改変メカニズムに関して科学的な解釈やパラドックスなどは一切ないのがSFうんちく好きには不満であるが、よくできた映画である。ただ、暗い。そのときの選択の差異によって引き起こされる運命の差。ベストな、よりベターな選択とはあるのだろうか? このプレミアム・エディションでは劇場公開版とディレクターズカット版の二枚組であり、脚本及び監督はエリック・ブレスとJ・マッキー・グラバーという兄弟で、この脚本を六年間温めただけとあって、よく脚本は練られている。面白いけれども、過去改変ものの傑作小説、故ケン・グリムウッドの『リプレイ』(1989)ほどに泣ける仕上がりになってないのは残念であるが、最近の映画にしては一見の価値は充分ある。ただし、お子さんがいる人は一緒に観ないで、ひっそり観てください。暴力や残酷描写バリバリです(;´Д`)
    • バタフライ・エフェクト2』が現在日本公開されてるらしいが、1の続編ではなく、まったく違う人たちの物語らしい(´・ω・`) さらにブレス&グラバー兄弟は関わってなくて、駄作っぽいという噂……