『太陽を盗んだ男』(1979)
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- 言わずと知れたカルトムービーである。今日は休みだったのだが天気が悪いので久々に眺めてみた。台風の接近ゆえ、『台風クラブ』でもあればそっちでもいいが生憎ないので、こっち。
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- 監督はゴジこと長谷川和彦で、彼のワンアンドオンリーといっても過言ではない最高傑作。原案・脚本はレナード・シュレイダー(脚本家だが、『タクシードライバー』などの脚本を書いた弟のポールのが有名。没となった『エクソシスト ビギニング』の彼版が発売されるのをなんとなく期待したい)。脚本はゴジとの共作。音楽は「太陽にほえろ!」「寺内貫太郎一家」「悪魔のようなあいつ」「傷だらけの天使」など70年代ドラマ黄金期の音楽を支えた井上堯之。助監督は故・相米慎二で、『セーラー服と機関銃』『台風クラブ』で監督を務めた日活出身の青春風味が得意な人。水谷豊主演のゴジのデビュー映画、『青春の殺人者』(1976)でも助監督を務めたようだ。
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- さて、ストーリーは冴えない中学教師である城戸誠(沢田研二)が東海村原子力発電所に侵入し、プルトニウムを強奪。原子爆弾を製作、日本政府を脅迫し……。まぁ、こう書くとハチャメチャな映画であるが、もうね、素晴らしいんだな。リアルでありながら、漫画チックで。個人が原爆製造って聞いただけでもうドキドキ(・∀・)だよね? 社会批判性を多分に含んだ問題意識はゴジの映画には特有である。原爆という絶対的凶器を抱えながらも、「何がしたいのか?」と問い続ける主人公も70〜80年代的な時代性を反映したものであるが、これは現代の若者にも充分通じる問いかけとなろう。答えの出ない問いを問い続け、問題提起をしてゆくのが美しい映画のひとつのありように思う。