『パルプ・フィクション / PULP FICTION』(1994)
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- 処女作には作家のすべてが詰まっているというよくいわれるが、それをよりスタイリッシュに昇華したのがこの『パルプ・フィクション』で、これでほぼ頂点を極めてしまう(物語を裁断し、断片的に再構築するカットバック手法はそれ以後は使われなくなる)といっても過言ではない。タランティーノ作品で使われBGM音楽のよさはここでも健在で、ディック・デイル&デル・トーンズの「ミザルー」(1963)へと雪崩れ込むオープニングは秀逸。まぁ、なぜサーフィンミュージックなのかとか、ここで寺内タケシ(゚Д゚≡゚Д゚)?ぽく、とか日本人のぼくらは想起してしまうわけだが、そう錯覚してしまう、オリエンタルなでんでけでけでんなエレキギターのインストサウンドをチョイスしたタランティーノの才能には拍手喝采してしまう。
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- ビンセント・ベガとマーセルス・ウォレスの妻:ギャングのボスであるマーセルス・ウォレス(ビング・ライムス 玄田哲章)が留守中に、その妻ミア・ウォレス(ユマ・サーマン 勝生真沙子)のお守り役を頼まれ、ビンセントはミアと共にレストランバーへ赴くことになる。我が儘なミアの願いで催されるツインストコンテストに出場し、踊りを披露するトラボルタ。往年の『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)をまるで彷彿とさせず、意図的にやる気のない踊りを演出したそれはさすがである。ボスの女と部下という、何かありそうで、あってはならない意味深な会話。元女優役というユマ・サーマンが色っぽい(吹き替えが勝生真沙子さんだから、なおさら妖艶さ倍増しである)。
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- ボニーの一件〜エピローグ:ビンセントとジュールスのプロローグから繋がる話。仕事の不始末でできた死体の処理をどうしようかと悩んだ二人はジュールスの友人ジミー(クエンティン・タランティーノ 立木文彦)を頼る。激怒するジミーを宥め、死体の掃除屋ウルフ(ハーヴェイ・カイテル 西村知道)を呼ぶことになる。タランティーノの激昂ぶりと、対照的なカイテルの冷静さが笑える。物語は円環構造でうまく締めくくられる。
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- 例によってぼくの性格上、これ以来タランティーノ関連作品はまだまだたくさん観ている(観る予定のDVDがある)んだが、その紹介感想はまた次回。
『レザボア・ドッグス/ RESERVOIR DOGS』(1991)
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- 一般に世間的な知名度が上がるのは次作『パルプ・フィクション』であるのだが、映画ファンの間で話題になり、今やカルト作品として名をとどめるのはこのデビュー作である。ビデオショップ店員をやりながら、この自主制作を目論んでいたタランティーノ。当時、友人ローレンス・ベンダーが通っていた俳優学校の先生を通じ、その脚本が俳優のハーヴェイ・カイテルの手に渡る。と……すると、カイテル自身から出演したいという電話がタランティーノにあったらしい。『トゥルー・ロマンス』『ナチュラル・ボーン・キラーズ』などの脚本も書いていたが、資金繰りのために泣く泣く売り飛ばしたという。そうして完成したこの処女作はインディペンデント映画の祭典、1992年度サンダンス映画祭でグランプリ候補となり、一躍注目を浴びることになる。
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- あらすじはシンプルだが、タランティーノの本質は飛び交う猥雑な会話(英語で聞くと、fuckingとか猥褻なスラングの嵐である)、分断され、非線形に進む離散的なカットバックシーンの連続、そして印象的で残虐な描写。遠回りするように、外堀から埋めてくように進められ、だんだんと人間関係が分かってくる物語構築が彼のキモである。タイトルが出るまでの長いシーンで、男たちが熱く語るのがマドンナの「ライク・ア・バージン」についてであるのだから、出だしから(゚Д゚≡゚Д゚)?である。そして流れるオープニング音楽はオランダ出身のシンガーソングライターであるジョージ・ベイカーの名曲「リトル・グリーン・バッグ」(1969) 分けが分からないんだが、(・∀・)カコイイ!!ってなっちゃうね。音楽の趣味がいいのもタランティーノ風味。
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- 宝石強盗計画のために集められた男たちは互いの素性を明かさずに、色のコードネームで呼び合う。前記したハーヴェイ・カイテルを主役に、イギリス人ながらアメリカ人役をやったティム・ロスは以後数作タランティーノ映画の常連になる。マイケル・マドセンもちょっと切れた感じの当たり役であり、今や印象的な脇役として欠かせないスティーヴ・ブシェミも出ている。エディ・バンカー(エドワード・バンカー)はタランティーノの敬愛する脚本家・作家であり、この映画出演はちょっと出て欲しいって程度のようだ。もちろん、【・∀・】ジサクジエン好きのタランティーノ自身も出てる。俳優であり映画監督としても実力派のショーン・ペン、その弟であるクリス・ペンは本作出演以後に個性派として復活するも、2006年に心臓肥大と薬物使用のために死亡している。そのエディの親父役で組織のボスであるジョーを演じたのが威厳たっぷりのローレンス・ティアニー。タランティーノの盟友ローレンス・ベンダーはたびたび映画のちょい役で出演するのが慣例になっているようだが、警官のエキストラとして登場する。カーク・バルツも警官役で重要な役であるのだが、本作以降はあまりパッとしないようだ。
Mr.ホワイト/ラリー(ハーヴェイ・カイテル 堀勝之祐)
Mr.オレンジ/フレディ(ティム・ロス 安原義人)
Mr.ブロンド/ヴィック(マイケル・マドセン 金尾哲夫)
Mr.ピンク(スティーヴ・ブシェミ 有本欽隆)
Mr.ブルー(故エディ・バンカー 高宮俊介)
Mr.ブラウン(クエンティン・タランティーノ 水野龍司)
ナイスガイ・エディ(故クリス・ペン 荒川太郎)
ジョー(故ローレンス・ティアニー 中庸助)
マーヴィン(カーク・バルツ 神谷和夫)
タランティーノ祭り開催中 in my heart
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- 前回紹介した『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2』(2005)の廉価DVDを買ったときに、クエンティン・タランティーノ『デス・プルーフ』発売記念というシールが貼ってあった。90年代半ばは映画関連のメディアでこれでもか、これでもかと……彼はメディア露出していた。まさに時代の寵児であった。「タランティーノ?……久しく観てないなぁ。たまには観てみるか……」とふと思った。それが祭りの始まりだった……
『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2〜 / THE DEVIL'S REJECTS』(2005)
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- ヘヴィーロックとかヘヴィーメタルとかデスメタルとかは聴かない(´・ω・`) ってことで音楽の話ではなく、今回は久々に、観た映画の話。話の繋がりが見えないかもしれぬが、この映画の監督はロブ・ゾンビというミュージシャンである。1985年にニューヨークでホワイト・ゾンビというバンドを結成し、今はソロで活動してる人らしいが、その手の音楽をしてる。まぁ、名前からも察せられる通りホラーマニアであり、それが講じたのどうか知らぬが、2003年に映画監督としてもデビューを果たしのが『マーダー・ライド・ショー / HOUSE OF 1000 CORPSES』である。副題に続編として匂わされた本作なのだが、その前作は未見ゆえ語ることはできないけれど、どうやら70年代のホラー諸作へのオマージュ的なシーンがちりばめられたB級殺人ホラー映画のようだ。特にトビー・フーパーの監督した伝説的カルト映画『悪魔のいけにえ / THE TEXAS CHAIN SAW MASSACRE』(1974)をリスペクトしているようであり、これもテキサス田舎町を舞台にした、ある殺人鬼一家の物語である。機会があれば前作も観ようとは思うが、その殺人鬼一家が帰ってきた……
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- テキサスの田舎町。大量殺戮を繰り広げたファイアフライ一家の所行が暴かれた。ジョン・クインシー・ワイデル保安官(ウィリアム・フォーサイス)率いる警察の大部隊は彼らを追いつめんと、その住処を包囲した。兄オーティス(ビル・モーズリイ)と妹ベイビー(シェリ・ムーン・ゾンビ)は辛くも急襲から脱するが、母マザー・ファイアフライ(レスリー・イースターブルック)は捕まってしまう。別行動していた父キャプテン・スポールディング(シド・ヘイグ)と合流し、虐殺を続けながら逃亡する一家をワイデル保安官は執念で追い続ける……
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- ミュージシャン出身のカルト作品ということで、はっきりいってそんなに過度な期待はしていなかったのが本音であるが、面白い。その殺人シーンは残酷の極みであり、誰にでも勧められるわけではないけれども、今作と前作では映画作りのベクトルが異なっているようである。いわゆる、60年代後半から70年代にかけて顕れた、アメリカン・ニュー・シネマ的作風が混ざっているのだ。これは反体制・反社会的な思想や行動原理を標榜する人間(多くは若者)が刹那的な暴走の果てに最後には時代の波に飲み込まれ、ディストピア的社会の中で圧死してゆく如き映画作品群の総称である。多の中に埋没してゆく個の無力感。ベトナム以後という反戦運動。人種差別。ヒッピーとドラッグカルチャー。暗中模索。ブレイクスルー。
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- 『俺たちに明日はない』『卒業』(1967) 『ブリット』(1968)『明日に向って撃て!』『イージー・ライダー』『真夜中のカーボーイ』(1969) 『マッシュ』『キャッチ22』(1970)『バニシング・ポイント』『フレンチ・コネクション』『機械じかけのオレンジ』『ダーティハリー』(1971)『ゲッタウェイ』『激突!』『ゴッドファーザー』(1972)『スケアクロウ』『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』『セルピコ』 (1973)『チャイナタウン』(1974)『狼たちの午後』『カッコーの巣の上で』(1975)『大統領の陰謀』『タクシー・ドライバー』(1976) などなどがそれらの代表作と思われるが……本作『デビルズ・リジェクト』のラストシーンがカタルシスを狙った、それっぽい演出を試みたのではないかと思うわけだ。前作はたぶん観なくてもいいが、本作はちょこっと観てもいいかもしれないとオススメしておく。
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- いわずもなが、血みどろグチャグチャが嫌いな人はやめた方がいいけどね(´・ω・`)
初音ミクの「Siberian Khatru」
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- 前回に続き、プログレの話。イエスといえば、何度も離散・再生・合体・分裂を繰り返すプログレバンドの代名詞のひとつである。そんな彼らの黄金期といわれるのが、ジョン・アンダーソン、ビル・ブラッフォード、クリス・スクワイア、スティーブ・ハウ、リック・ウェイクマンというメンバーでの活動期で、『FRAGILE / こわれもの』(1971)や『CLOSE TO THE DDGE / 危機』(1972)という名盤が生まれたことはほぼ異論ないと思われる。
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- 『危機』(1972)収録の名曲「Siberian Khatru」がなんと、あの初音ミクにカバー(?)されてるのを発見した。よくこれだけ複雑な曲を打ち込んだものだ……作者に敬意を表したい。
↑イエスのライブ映像(メンバーは黄金期ではない)
↑初音ミクによる「Siberian Khatru」
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- オリジナルはニコニコ動画のこちらだと思う。ぶっちゃけこっちのがコメントやらあるので面白い(・∀・)ニヤニヤ
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- おまけでキングクリムゾンの宮殿もあった(゚Д゚)つ
スーパーグループAISA
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- エイジアである。最近音楽という音楽を聴いてないというか、ロバート・フリップ擁するキングクリムゾンもよく分からない方向へシフトしまくって十数年。ようつべなんかで、懐かしい映像を眺めていたりすると、みんな若いなぁという印象。
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- 歳月は残酷というか、かつてのプログレ関係者は「昔を今になすよしもがな」ってぐらい姿が……ベースを抱いた渡り鳥ことジョン・ウェットンさまもいつぞやから飢豚さまと忌まわしい形容をされるほどお太りになり、なにやら心臓のバイパス手術を受けたとかいう噂が聞こえてくる。1982年に結成したスーパーグループであるASIAであるが、今年の5月にまたオリジナルメンバー再結成して、また来日してライヴをするとか。そういえば、その昔、大学時代に中学高校時代の友人(高校に入ってから、彼もプログレ好きと判明)がエイジアのライブチケットがあるとかで、ライブに行ったのだが、ボーカルがウエットンさまでなく、ジョン・ペインという人でちょっと涙目になった(´・ω・`)
広川太一郎さん死去について
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- 久々の更新であるけれども、また訃報である。3月3日享年68歳、死因は癌であったらしい。
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- 映画<007シリーズ>ロジャー・ムーア(結局テレビ放映時吹き替えではないのでリマスターの新録は買ってないが)、<Mr.BOO!シリーズ>のマイケル・ホイ、またロバート・レッドフォードやトニー・カーティスなどの吹き替えを中心に、二枚目と三枚目の狭間を表現できる声優であった。特に、「〜なんとかしちゃったりしてぇー」「〜じゃん」というおよそアドリブっぽい(しかし、実際は台本にきちんと計算して書き込まれていたらしい)、コメディの吹き替えに多用した通称「広川節」と言われる吹き替えは、子ども心に夢中になったものだ。最近『プロジェクトBB』ではジャッキー・チェン(石丸博也)、ユン・ピョウ(古谷徹)と共に、 マイケル・ホイ役で吹き替え出演。
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- アニメでは『幽霊城のドボチョン一家』のミイラ男、『チキチキマシン猛レース』のキザトト君、『ムーミン』のスノーク、『名探偵ホームズ』のホームズ、『あしたのジョー』のカーロス・リベラなどが印象深いか。
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- 時代は少々ずれるので、ぼくはおぼろげにしか憶えてないが、英国を代表する前衛コメディユニット、モンティ・パイソンでもエリック・アイドルの吹き替えをしていた。奇しくも、2008年2月20日に東京12チャンネル版日本語吹き替え音声トラックを収録したDVDボックスセット『空飛ぶモンティ・パイソン 日本語吹替復活 DVD BOX』が出ていて、故・山田康男を初め懐かしい吹き替えが観られるようなので、その世代のファンの方はどうぞ(´・ω・`)つ特にきょさん当たりにはオヌヌメしたい。
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- 謹んで、冥福を祈りたい(〜なんていっちゃったりして(´Д⊂グスン)。